関節7つの精密機能(目次)
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➡関節1)応力を分散させる免震機能-関節包内運動-
➡関節2)振動を吸収する制震機能-脳を守る骨格ダンパー-
➡関節3)衝撃をブロックする断震機能-関節内圧変動システム-
➡関節4)関節軟骨の神秘-“知的衝撃吸収”機能-
➡関節5)関節軟骨の神秘-驚異の摩擦係数-
➡関節6)潤滑オイルの自動交換システム-滑膜B型細胞の“受容分泌吸収”機能-
➡関節7)関節受容器によるフィードフォワード制御
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番外編
➡関節は振動エネルギーを熱エネルギーに変える変換装置!?
➡膝関節の内圧は陽圧?陰圧?
関節神経学の基礎
1980年代、関節の神経支配に関する或る論文が発表されました。その中で紹介されている関節受容器の組織学的特徴は以下のとおりです。
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筆者はかつて関節運動学的アプローチおよび関節神経学的治療法(ANT)の臨床に傾倒し、関節受容器の反応を追究していた時期があります。
以下にご紹介する“仮説(推論)”はその時期に構築したものです。これを端諸にして“脳と痛みの関係”に逢着した経緯があり、筆者の原点とも言うべき拙論となっています。
関節反射とは何か?(三上理論)
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機械工学における加速度センサは、 一般に1s(秒)当たりの速度の変化を検出しており、振動センサと異なり、直流(DC)の加速度が検出可能であるため、その多くは静止状態における静的加速度すなわち重力加速度も検出する。人間の関節受容器
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他方、
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その内部構造は内棍と外棍に分かれており、これは昆虫の平均棍(振動により飛翔運動の角速度を検出する感覚器で、いわば航空機のジャイロスコープの働きをする)と酷似している。
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これらの事実から、
質量を持った物体がある速度を持って運動しているとき、その物体に角速度が作用すると、見かけ上の力(コリオリの力)が発生する。さらに加速度が物体に作用すると力(ニュートンの法則 F=mAによる)が発生する。
人間の関節において、前者を検出するセンサが
また関節内圧の制御においても、関節受容器の関与が推度される。たとえば膝関節の屈曲角度の変化に伴う内圧変動は万人に共通のパターンというものはなく、バラエティに富んだ個体差が見られることが分かっている。
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伸展から徐々に屈曲させていくと、内圧が
関節液の分泌と吸収は滑膜B型細胞が担っていると考えられているが、その詳細については脳脊髄液や眼房水ほどは分かっていない。
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細胞外液に満たされる準密閉構造の組織においては、脳脊髄液や眼房水に代表されるように、液量の調節は“内圧変動に伴う強制排出方式”である。これは蛇口にレバーを設けないシステムであり、筆者はこれを“
関節は静止状態でも常に重力の影響を受け、“引っ張られている“。筋肉は筋トーヌスという抗重力反射を持っているが、実は関節も“関節トーヌス”とも言うべき“
この関節トーヌスと蛇口開きっ放しの法則によって関節液は“常時”分泌され続けており、その関節液が充満することで-水が充満することで膨らむ水風船のように-内圧が生み出されており、脳脊髄液や眼房水と同様に
このとき関節包の張力に反応する
筆者は心理的に激しいストレスに同期して水腫が増減する膝関節炎の症例を経験している。この事実は脳内における感情プログラムのエラーが関節反射の中枢に影響を与えることで、
一方で、
関節トーヌスによって、常時張力が発生し続けている関節包に対して、常にブレーキを踏みつつ、動きに応じてそのブレーキの強弱を変えるシステムが関節反射だと言える(実際にプレーキを踏むのは中枢の仕事)。
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以上の考察を踏まえ、
感情プログラムの問題を抱えた生体に見られる内圧制御の破綻(関節水腫)がこの考えを後押ししている。以上を整理すると次のごとくである。
◆
◆3軸検出能力があるため、回旋運動の加速度に反応することができる
◆そのため運動自由度が3度の関節(肩関節、股関節)に多いと解釈できる
◆関節包の緊張
◆微振動を検知すると、当該関節を含め一側同側の複数の関節軟部組織の緊張を高める(この理由については後述する)
◆そのため直接振動(外部との接触)を受けやすい四肢末端の関節に多いと解釈できる
◆関節包の緊張
◆つまり関節包の緊張
筋受容器によるFB制御と関節受容器によるFF制御
現代社会において、加速度センサと角速度センサはカーナビ、エアバッグ、デジカメ、スマホ、ゲーム機器、セグウェイ、ロボット、航空機など、あらゆる精密機器に欠かせない入力装置である。
通常、3次元空間の物体の動作は加速度と角速度で表され、これらを検出するセンサは主にマイクロマシニング技術やセラミック技術を用いて作られている。人間の身体においては、関節に内蔵されているルフィニ小体とパチニ小体すなわち
機械工学における制御系では、フィードバック制御の欠点(外乱を受けた影響が実際に現れてからでないと修正できない)を補うため、フィードフォワード制御(いち早く外乱を検出して影響を最低限に留める)を併用するケースがほとんどである。
※ ⇒フィードバック制御とフィードフォワード制御の違い(熱帯魚の水槽の例)
実は人間の運動器の制御もまったく同じだと臆断される。すなわち
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以上が関節受容器の反応をひたすら追いかけていた時期(2008年~2010年)に、筆者が描いた推論ですが、どこまで正しいのかは後世の研究者に託したいと思います。
仮に全体の文脈に大きな齟齬がなく、なおかつフィードフォワード制御を統括する部署が本当に“小脳”だとすれば、
ただし関節タッチ系の技術と関節反射の理論は完全に符合しているかと言えば、クエスチョンマークの部分も…。おそらく
例えば自分で自分をくすぐることはできないという現象も小脳の予測制御が絡んでいますので、こうした点を鑑みて小脳の機能も探究していく必要があろうかと…。
全ての徒手医学が抱える問題ではありますが、技術的な交絡因子を完璧に排除することは事実上不可能なわけで、チキンオアザエッグも含めて軽々に結論付けることは避けたい…。
筆者はANTの臨床体験から、関節受容器への介入が運動器の緊張(トーヌス)を変えることはほぼ間違いないと感じています。しかし“運動器トーヌス”を変えるメカニズムとその結果痛みが改善されるメカニズムを同一ライン上の現象と見なしていいのか。 あるいは別のライン上の現象と見なすべきなのか。
基本的に別次元の現象ではあるが、そのライン上のどこかに交差点があるということなのか。その場合、その交差点は三差路、あるいは四差路、あるいは五差路、あるいは?交差点があるとすれば、皮膚受容器からの情報処理ラインが絡んでくる可能性は高いと思われ…。
こうした交絡因子-私はこれを
本論は2010年に執筆され、2013年ネット上に公開されました(一部修正あり)。これを起源に「関節反射ショック理論」「痛み記憶の再生理論」「DMN境界意識仮説」が生み出され、さらに新脳身体論(PtoB)、COSIA(認知科学統合アプローチ)、総合臨床アプローチといった概念に昇華されていきます。