当会フォーラムは会員サロン(外部サイト)に移設されましたが、トピックの移動ができなかったため、本ページでは旧記事の一部を保存、再現しています。

父親の事でご相談があります。
利用しているデイサービスで急に腰から背部の痛みを訴えました。圧迫骨折を疑いまして自宅で様子を見ていましたがその日の晩に誤嚥により肺炎を起こしてしまい救急車にて中央病院に入院となりました。
症状も重く肺水腫により元々の心不全も悪化し挿管はしませんでしたが酸素マスクで管理しベッドでの安静を続け、なんとか持ち直し退院出来ました。
入院時腰の痛みは腎盂腎炎によるものとされレントゲンさえ撮りませんでした。リクエストはしたのですが。
退院後も腰痛は続いていましたが少しずつ立ち上がれるようになってきたのですが3日前の夜に強い腹痛のため再び中央病院に救急車で受診し原因は解らなかったのですが腹痛も治まったので入院はせず、ついで腰のレントゲンを撮ってもらったら12胸椎圧迫骨折が判明しました。
今は安静にさせとく事しか思いつきません。BReINのタッチ系やアングラクションを…、とも思ったのですが少しでも動かすとすごく痛がるので、手がだせずにいます。
ずっとこのままだと廃用が進むのが明らかで、79歳という年齢を考えても、本当にどうしたらよいものか全くわかりません。アドバイスをいただけると助かります。
よろしくお願いします。

高齢者では、軽微な外力もしくは外力なしに急性腰痛を発症し、X線に圧迫骨折様の所見(椎体の圧潰)が映り込むと、そのほとんどが骨折という診断名の下、ハードペインを前提にした治療が行われます。
しかし、そのほとんどは、実は椎体以外の構造因子(椎間関節をはじめとする後方支柱)によるハードペインまたはハイブリッドペインであり、ハイブリッドペインであったとしても、その内訳としてソフトペインの比重が高いです。
したがって、圧迫骨折というラベリング症例を診る際は、後方支柱由来のハードペイン、何らかの心理的背景から来るソフトペイン、この両者の視点が必要です。
とは言え、ハードペインというものは医学の常識よりはるかに短い時間で収束します(自らの足を骨折させる人体実験で実証済み)ので、臨床上問題となってくるケースでは間違いなくソフトペインがメインターゲットになります。
長管骨と椎体では、単位面積あたりに占める皮質と海綿骨の比重が異なっていて、皮質に侵入する血管や神経の構成が違っており、さらに長管骨での皮質破綻と、椎体での皮質破綻とでは、ハードペイン醸成に関わるデバイス応答がそもそも同じではありません。
椎体以外の構造性ハードペインを出している生体、あるいはソフトペインを出している生体にたまたま椎体の圧潰が見つかると、「圧迫骨折」と診断されてしまうことが多く…、これは画像ラベリングの典型例であり、高齢者は軽い尻もちでも圧迫骨折云々というのは、ゴミ箱診断の最たるものです。
というわけで、脊椎圧迫骨折の問題は、医学の成書を書き換えねばならないという当方のスタンスの原点に位置づけられています。
高齢者に限らず、脊椎への急性外傷におけるハードペインの主因は椎体由来ではなく、その他の脊椎構造の損壊(椎間関節や靭帯等)にあります。
高所からの転落での急性圧迫骨折も同様で、椎体の圧潰そのものは痛みの主原因になりません。X線上の椎体圧潰と痛みが相関しないというのは、何も慢性腰痛に限った話ではなく、実は新鮮外傷においても同じだということです。
X線画像と臨床所見の相関について、整形勤務時代に静的時間軸による解析と動的時間軸による解析を10年近く続けましたが、その結果X線上の圧迫骨折所見の強さ(重症度)と患者の訴え(痛みの強さ)がまったく相関しないこと、無症状の陳旧例と急性外傷の新鮮例の両者のあいだに画像上明らかな違いがないことが分かりました。
残念ながら日本の整形の多くが依然として静的時間軸での診断オンリーなので、いつまでたっても診断哲学の変革は起こりませんが…。
さて、今回お父様に何が起きているのか?
激しい腰痛、そしてその後も消えない痛み、さらに腹痛まで…、これらの現象はこれまで私が主張しているとおり、まさしくうつ病や認知症を回避する役割…。
今、お父様の脳は必死に戦っている可能性があります。うつや認知症を防ぐために、脳が自ら痛みを出し続けているという解釈です。
仮にソフトペインでなかったとしても、当方の見方が間違っていて本当にハードペインだったとしても、痛みという感覚情報はそれ自体が脳に大きなインパクトをもたらし、実際に危機回避をもたらします。
年単位に及ぶ痛みは脳の構造にネガティブな変化(萎縮などの変性)を起こす場面もありますが、短期的に強い痛みはポジティブな変化すなわち脳弾塑性を誘発して、ブレノスタシスを回復させることがあります。
夜中に足やふくらはぎがつる現象(こむらがえり)がその最たるもので、あの激痛によって脳弾塑性の発現が促されるんです。
人間は脳過負荷(オーバーロード)に起因する明確なサイン(痛み)を出すことができる個体と、できない個体に分かれますが、これができない高齢者においては、脳恒常性機能不全(BD)が水面下でどんどん進行し続けて、昨今報道されているような「ぺダルの踏み間違いや逆走」をしてしまうか、重症寝たきりのうつ病になるか、認知症ど真ん中を突き進むかのいずれかの末路をたどります。
たまたま他の何らかの病気によって入院加療という形になると、そういう流れがマスキングされて見えづらくなっているだけで、実際にはBDの進行具合というものが様々な疾患の陰に隠れているというのが当方の見方です。
以上の視点を踏まえ、「圧迫骨折だから安静に」という流れをいかに回避するかが一番重要です。
本人に「骨の問題ではない」ことをきちんと理解してもらい(現状どの程度の理解力をお持ちなのか分かりませんが)とにかく、腰痛の原因が構造的なものでないことを分かってもらうことです。
そのうえで、最近のデイサービスで何があったのか、あるいは家庭内、あるいは周囲との関係性、コロナの問題等々本人がどのような思いを抱いているのか徹底して心の内実の扉をノックし続けることが肝要です。
場合によってはお母さまから聞いていただいたり、デイサービスの関係者から聞いたり、とにかく本人のメンタルにどんな変化が起きていたのかを知る必要があります。
もし今のお父様がBDサインを全く出せなかったなら、つまり痛みやその他の体調変化を露わにできなかったら、そちらのほうがよほど危ないことになっていたというのが当方の解釈です。
人間の痛みはBDを知らせるサインであると同時に、脳の自衛措置としての機能を兼務する場合があり、これについては脳恒常性防衛(Brainostatic defense)と呼んでいます。
そして、この防衛機能が過剰に反応して暴走した状態は脳恒常性過剰防衛(Brainostatic hyper defense)、略してBHDと言います。いわゆる痛み回路の超賦活化です。CRPS(RSD)重症例がその典型です。
いずれにしても、お父様を直接診察しているわけでもなく、極めて限られた情報に対する一方的な推測ですので、何かヒントになるものがあったら、それをご活用いただいて、あとはご自身の感覚を最優先になさってください。
ご家族皆様のご自愛をお祈りしております。

たいへんご丁寧な返信恐縮です。
ということは父の痛みはハイブリッドペインの可能性が高いということでしょうか。
以前勤務していた公立病院の整形カンファレンスに出席したとき、若い医師が無症候の圧迫骨折を取り上げたら、部長さんが「なんでそんなもの出すんだ」と怒ってまして、なんで?って不思議に思いましたが、今回のご返事を読んで、なんとなく意味が分かったような気がします。
動的時間軸での診断…、たしかに仰るとおりですね。
実は父は最近あることで相当に思い悩んでいて、言われてみると思い当たることがあります。
そのあたりの「扉」ですか…、そういうのあまり得意じゃないんですが、私も試しにノックしてみたいと思います。
このたびは貴重なアドバイスありがとうございました。
旧フォーラム≪目次≫
・妻が帯状疱疹になって今も…
・父が背部の激痛を訴え、脊椎圧迫骨折…
・youtubeでミラーセラピーの動画を観て…
・正会員の中に学生はいますか?
・大腿骨頸部骨折の患者を見舞いに行って土下座させられたという話は本当ですか?
・「気圧と人体の関係」記事について
・ゲーム依存の甥っ子が肩こりで来院…傾聴は自分にはむつかしい…
・PCR検査と条件付き確率について…
・「ファクトフルネス~感染症とウィルス~」を観たおかげで…」
・一般講演会の動画so good!…youtubeで完全公開すべきでは?
・初診時劇的改善例が2回目の治療を当日キャンセル…
・私はIT系企業に勤める整体師ですが…
・画像診断の虚実について(一般の方からのご批判メールにお答えします)…
・ブラインドマインドとアレキシサイミア(失感情症)の違いについて

